深紅の繭が孕む熱が/ホロウ・シカエルボク
えて死んでいくものも少なくない、普通の誕生、普通の死と違うのはそこだ、それは意識されなければ動かないし、存在すら在りえないものになってしまう、人間には必ずその、幾つもの誕生と死のための気づきが求められる、繭の中の血はどんどん温度を増していく、俺にはそれは沸騰にすら思える、誕生とは噴火のようなものだ、太古の記憶が身体の中で目覚めようとするのだ、マグマと血はとてもよく似ているじゃないか―遺伝子の中にはすべてがある、それは広大な宇宙だ、俺は身体の中に宇宙を孕んでいる、未知なるものはすでに知られているのだ、俺はそれを確かめようとしているだけだ、そして繭は破られる、静かに、慎重に…寄り集まったそれを、もう一度一本一本の細い糸に戻すかのように―そこにはすべてがある、常にすべてがある、あらゆる感覚、あらゆる知覚、あらゆる感情が存在している、どれかひとつなんて必ず矛盾している、定義をするために生まれるわけではないのだ、さあ始めよう、すでに俺は血まみれだ、そして表面を這いつくし、床に広がったそれは、いつか新しい言葉を俺に刻ませるだろう…。
戻る 編 削 Point(1)