日記、思ったこと/由比良 倖
「でも……」の先は言えない。けれど僕は完全にひとりではない。詩や小説は毎日たくさんの人によって、書かれ続けているのだから。
目の前のちょっとしたものを愛しいと思う。例えば、文庫本のロゴマークなど。
カメラは、人間よりも余程正確に、完璧に風景を記録出来るけれど、カメラは多分、何も感じてない。もし、脳の中の映像記憶を、そのままメモリに移せたとしたら、十年前に見た風景だって鮮明に思い返せる。便利だ。
けれど、古びた記憶の懐かしさ、その風景を食い入るように見詰める、昔よりずっと老いてしまった眼のひたむきさは、メモリの中には無い。
そのひたむきさだけが、僕の根拠なんじゃないだろうか?
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