しがらみのふるさとに/山犬切
る 僕は自らの傷に温かい唾をつけてそれを癒すことがいつからか習い性になってしまった この慰安はこれまでも転がる雪玉のように自身の規模を拡大しようとする欲求を隠さなかったしこれからもゆっくりと強度を高めていく傾向にあるだろう この傷が、このビー玉に付いたひっかき傷みたいな傷が、僕という人間を自分を慰める方へと動機づける 母親。ふるさと。これらはどちらも他ならぬ僕を含めあらゆる人間につく烙印に似ているように思えた 僕は自分を慰めることこそ自分の為すべき仕事ではないかと思った 人生はマッチ箱のようだ 僕の母親はもうとっくに死んでるし、普通の人が中学や高校に通う年齢もとうに過ぎてしまった 僕は20代のニー
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