時が溶ける/ホロウ・シカエルボク
 


汚れて、傷んだ
ボロ布みたいな服を着ていたが
鼻につくような臭いはまるでなかった
違和感はきっとそこから生まれているのだろう
元々はどれも
いい生地だったのかもしれなかった
でも過去なんて
たいていの人間には何の意味も持たないものだ
終わった人間だけが
楽しそうに昔話をする

野良猫が何の関心もない素振りで通り過ぎて
数百メートル先で振り返ったまま少しの間じっとしていた
あいつはさっきもあそこに居ただろうか
そんなことを考えているみたいに見えた
程なく猫は気にするのをやめて歩き去っていった
好奇心は猫を殺す、って
何処で目にしたフレーズだったかな


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