時が溶ける/ホロウ・シカエルボク
その先にはもうなにもなかった
住宅地の終わりと、さほど高くない山があるだけだった
そいつはそのまま、森の中に吸い込まれるように消えていった
戯れに探してみてもよかったが
たぶん見つけることは出来ないだろう
そのまま山に入ることにした
そこにあるのは
30年前に誰も居なくなった
村の残骸だけだった
存在の輪郭が曖昧になった連中が
交わらないだけの距離を取りながらうろうろしていた
正直さってもしかしたらそういうことなのかもしれない
彼らの邪魔をしないように夜明けを待つ
明るくなる瞬間に
悲鳴を上げるのはもしかしたら俺かもしれない
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