タイムカプセル/山犬切
 
ケで少し厚みを失ったレンズのような言葉で人々が通信する
夏の日差しが照りつける土はまるで浄土のようだ 地面を踏んで影を踏む 影を踏むとにじりよる世界 遠のく社会
散策に飽きて噴水前のベンチに腰を下ろす 少し病気の夏服の半袖
水がふきあがり 流れる 水面でひかりが屈折し ポカリスエットを飲み溜め息をつき火照るいのちを休ませる

人々はこの夏も汗ばんで それぞれの小品のドラマを演技する
僕の周りは敵か味方か判然としないのっぺらぼうばかり
黒いのか白いのか、黒い声も白い声もミュートし
電車の空席に座る 浅葱色した夏の世田谷を電車は切り裂いていく
開いた窓の風で髪の毛がぶわっと舞い上がる
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