タイムカプセル/山犬切
がる 夏の光を浴びる生命づく緑と舞い上がる僕の髪の毛
心は器の水だ 夏はその水が闇のなかで妙にきらきら輝いて とぷんとぷんと音をたてて揺れる
こころは腫れ こころは切り裂かれ こころは膿を出し こころは癒える
こころは玉のように磨かれる
8月 薄曇りの蒸し暑い夜 雲隠れした月が暑そうで
ネットの夏らしい画像をアイスをなめながら見ていると
どこかで花火をやっているのか パーンという音が外でした
病気が治るまで…あと何年 指折り数える
赤黒い暑気をきって公園へ向かった
適当な場所を見繕い、スコップで土を掘り、資料を入れたケースを埋める
僕はこの夏 星も花火も見ないでタイムカプセルを埋めていた
帰り 花火を見たのであろう親子とすれ違った
幼女はりんご飴をなめていて 夜気のなかそれは
くらりとするような赤と黒だった
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