獣臭/山人
するために彼は餌を求めてさまよい、人気のない登山道を歩くことを知っていた。道があるのに藪を歩く必要はない。あの地はまだ雪消えが始まったばかりでみずみずしい山菜の確保は難しかったのだろう。あちこちを彷徨いながら彼は山道を利用し移動中であった。その道を歩く人間は雪消え以降私が初めてであったのであろう。
生きるために食べる。体を作り生殖、出産を繰り返すそれぞれの野生動物たち。彼らにとっての生は敬虔なものであり、食べるという行為は野生動物たちの唯一の信念なのだろう。
私自身、自暴自棄になることが今まで多々あった。この世から消えたいと思うことも。なんでこんな不条理で不公平なのか、何で俺だけが、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)