陸に上がったワンピースの話/万願寺
 
柄を、わたしは死守していきますので。と、厳しい口調で女が言うたび、おそろしすぎて動物たちは泣いてしまった。けれどたびたび彼女を訪れては、詩を差し入れた。


 ずっと歩いていたその丘の上に、おおきなおおきなクレーターがあった。かつて星が落ちた。その中心にうすむらさきは歩いていって、そのいちばん底で、思いっきりの声で、「ばーーーーーーーーか!」と言った。くそが、と付け足したかったが、それは、少し悲しくなってしまいそうだったのでやめた。クレーターから丘へ戻ると夕焼けだった。その日も野営をして、焚火の火をガラスのコップの水で消してから、すこしだけそれが煙をあげる様子を見ていた。その夜、クレーターの
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