詩の日めくり 二〇一九年五月一日─三十一日/田中宏輔
 
がら声をかけてきたのだった。見知らぬ人間から声をかけてこられることが、以前にもあったので、「おお!」と返事したのだけれど、見覚えがなかった。部屋に戻って思い出したら、高校時代の友だちで、後藤くんというのがいて、ごっつあんと呼んでいたのだが、ごっつあんだったことに気がついた。高校時代は丸顔でかわいらしかったのだけれど、電車のなかで声をかけてきた人物は、年老いた面長の汚い顔つきになっていた。残念。


二〇一九年五月十七日 「20世紀ラテンアメリカ短篇選」


 岩波文庫の『20世紀ラテンアメリカ短篇選』の最後から2番目に収録されているブライス=エチェニケの「リナーレス夫妻に会うまで」は面
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