ボロボロの壁/ホロウ・シカエルボク
トンの若いころにそっくりな医者が処置を終えてそう言った。
「どうしてこんな怪我を?」
分らない、と俺は首を横に振った。医者は怪訝な顔をした。家で寝ていたんだ、と俺は分らないなりになんとか説明してみようと試みた。
「痛みで目が覚めて、ベッドに居たはずなのにリビングのテーブルの前に座っていて、手首から血が流れていた。尋常じゃない量だったから、ビビッてすぐ手首を縛ってここに来た。そんな感じだから、自分でもなにがなんだか…。」
医者は頷き、見てればだいたい分るけど、と前置きしながら
「ドラッグやらの類はやってないね?アルコール中毒とか、そういった経験もない?」
ないよ、と俺は答えた。夢遊病の類
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