ボロボロの壁/ホロウ・シカエルボク
 
目を覚ました。左の手首にひどい痛みがあった。寝床で横になっていたはずなのに、リビングのテーブルの前に座っていた。電気をつけ、左手首を見てみると、いま切ったばかりという感じでざっくりと、まるで手を切り落とそうとしたみたいに切り裂かれていて、真っ赤な血がポタポタと床を濡らしていた。俺は悲鳴を上げて洗面に飛び込み、タオルを取って手首をきつく巻き(といっても片手でそうするのには限界があった)、救急病院へと駆け込んだ。自分では気づかなかったが衣服にもかなりの血がついていて、これは大ごとだと判断した看護師が順番を飛ばして診察室へと案内してくれた。
「あと数ミリ深かったら危なかった。」
デンゼル・ワシントン
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