ボロボロの壁/ホロウ・シカエルボク
で理解出来なかった。まるで外国の言葉を聞いているみたいだった。
「今しかないと思ったの。ボロボロの壁になる前に…自分を守るために、何かしなくちゃいけないと思って。」
両親には少し前から煩く言われていたの、と、思い出したように付け加えた。
「だから、俺と別れて―誰かと結婚するって?」
自分でも馬鹿みたいだって思うわよ、とアビーは俯きながら言った。
「でもね、あたし、この壁を見るのが怖いのよ。怖くてどうしようもないの。まるで少し先の自分を見ているみたいな気分になるの。だから、利用出来るものは利用して、この人生を抜け出そうって思ったのよ。」
俺はなにか言うべきだと思った。だけど、なにも思いつ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)