ボロボロの壁/ホロウ・シカエルボク
ら数週間、俺たちは互いになんやかやつまらない用事を抱えて会うことが出来なかった。たまにはきちんと仕事をしたりしなければいけなかったから、それぐらい会わないでいることはよくあることだった。俺はなにも疑っていなかったし、なにも心配してはいなかった。これまでの生活が変わることなんて考えもしなかったし、始まった時と同じでなんとなくいつまでもそれが続いていくものだと暢気に考えていた。アビーがもうお終いにしましょうと言ったのは、ひと月ほどあとのコテージだった。
「あたしね、結婚することになったの。」
俺はどんな言葉も思いつかず、阿呆みたいに口を開けてアビーの顔を見ていた。彼女の言っていることがまるで理
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