雪国/山人
。おそらく、あちこちにガタが来て、まともな労働は出来なくなっているのだろう。昨年まで、危険な屋根の雪下ろしや、人力除雪などを積極的に行ってきたが、この冬は全く動かずにいる。一度、屋根に上る予定でいたらしいが、私がやると言い止めさせた。あれ以来ずっと私だけが除雪を行っている。父は今、朝四時に起き、薪ストーブに火を入れ、部屋を暖め新聞を眺め食事を摂る。日長テレビは父のために鳴り続け、夜は六時過ぎには床に就く。淡々と、日々を儀式を行うがごとく生きている。なにを考えているのかわからないが、何かを考えているのだろう。「あの道は俺が作った」「俺が作ったスキー場だった」と一切をデフォルメして言い放った父は口を失
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