祖母と故郷と、夕暮れと。/ちぇりこ。
 


それ以来
車に乗ってる時にサイドミラーを見ると
正座をしたままの姿勢で車と同じ速度で並走する祖母が居たり
会社のデスクで資料を漁ろうと引き出しを開けると石油ストーブの上に敷いたアルミホイルの上でお餅を焼いている祖母が居たり
お風呂に入ると立ちのぼる湯気が不規則にうねりだしスーラの点描画で描写されたような祖母がゆらゆら揺れていたり

ある日
彼女を連れて部屋へ帰る もしやと思いドアノブを回し玄関のドアを開ける
祖母は居た
玄関口で正座をしたまま深々と頭を下げている
「せいちゃんは本当に優しくていい子だから末永くよろしく頼みます」
彼女もつられて正座をして頭を下げる

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