精神病院でのある一日/朧月夜
、南病棟の改築をしている。だから、工事関係者が大勢(でもないけれど)出入りしている。今、その一人が停めてあるワゴン車のドアを開けて、工事用具の積み下ろしをしているんだろうか、それとも何かの書類を探しているのだろうか。がたがたと音を立てている。
都会の住宅地のなかにぽつんとある病院だけれど、敷地内というよりは、その周囲に緑が多いために、小鳥たちがやってきて啼いている。縄張り争いをしているのだろうか、それとも、友人や恋人と言葉をかわし、さえずり合っているのだろうか。……そう思うと急に、その鳥たちが押し黙る。ふいと吹く、やや強い風。工事の人も、何かを閉じたぱたん、という音を立てる。
そして今度は
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