りりい捕物帖/阪井マチ
 
ついていった。

 茄子の人がまっすぐ向かったのは、依頼者の自宅だった。どうして私の家の場所が分かるんですか、と震えながら依頼者は訊ねたけれど茄子は何も言わなかった。私たちは後ろから見ていたので気づいたが、部屋から出てくるとき茄子は依頼者の鞄の中から携帯電話をこっそり抜き出していたのだ。歩きながらいったいいつ端末の中身を盗み見たのかは分からないが。

 茄子は家の中を滅茶苦茶に荒らしまわった。窓ガラスを割ってさくさく踏みながら床板をひっぺがした。家具家電を洩れなく破壊して、上から水道水をぶちまけた。押し入れから冬用の布団を出したかと思うと、おもむろに着火した。依頼者が号泣しながら鎮火に挑ん
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