りりい捕物帖/阪井マチ
た表札には、近付かなければ読めないほどびっしりと漢字が書いてあった。その中には私の姓も何回か登場しているように見えた。
部屋の中に入ると椅子が一つあって、座っている者がいて、その頭が大きな茄子だった。見れば見るほど大きな茄子で、オバケカボチャみたいだった。聞いていた通りだ。私は真正面に移動して、そのつやつやした表面をじっくり眺めた。身じろぎもしない。私は自分がここに来た目的を何度も反芻し、決心を固めた。そして、茄子の頭に話し掛けた。
りりいさん、私をあいつから、
やめな、と口を塞がれて振り返ると噂好きが立っていた。物陰に連れて行かれてそこから二人で茄子を見た。あれに助けを求めた
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