詩の日めくり 二〇一七年十三月一日─三十一日/田中宏輔
投げる
詩人は河川敷のベンチに坐りながら
自分が橋の上から身を投げるシーンを目にする
うつぶせになって自分の死体が上流から流れてくるのを見つめる
橋の上から身を投げる直前に
橋の上からベンチに坐った自分が自分を見つめる自分を見る
上流から流れてくる自分の死体を見る
冷たい水のなかで目をさます
それが詩人の詩の世界であることに気づく
詩人の目を通してものを見ていたことに気づく
橋の上からベンチを見下ろすと
自分自身がベンチの上で
寝かされているのを見る
「こんどは
わたしが介抱してあげよう」
目をあけると以前助けたドクターが
自分の顔を見下ろしていた
「あいつらだ
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