雲海/山人
 
汗粒が落下することがある。そんな時には、なんだかちょっとうれしいような、得したような気分になる。そんな苦行の中の楽しみ方も工夫すればないわけではない。
 十日目、九月二十日、前日の作業地に刈り払い機はデポしてあり、作業の荷物だけを背負っての県境登山口スタートであった。前日の作業現場まで二時間半は掛かる。四時過ぎから歩き出す。気温は高くなると思い、水は二リットルにしたし、燃料も十分持った。ゆえに荷は軽くはない。
 早朝に登り始めるのには二つの理由があった。一つはもちろん早めに行って早めに作業を開始し、日の暮れないうちに帰路に着くという事である。もう一つは最初の樹林帯を登り切ると電力会社の反射板が
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