灰燼から這い出る/幽霊
 
て僕はぼぅっとしてしまう、常に。小説などはそれにより書けなかった。一文を書くのに肉体が裏返るほどに悶えて捻り出す。苦しい。あるとき、ハッと息苦しいことに気がついて、僕は呼吸が止まっていたのだ。これは内側からやって来る小刻みな死であった。僕は肺を使って自らを救命する。
 
 僕は裸足であったことに気がついた。玄関には僕の靴があったのだ。びっくりした。再びこの部屋に戻ってきた僕は遮光カーテンを思い切り開いてやろうと思う。そして素晴らしい陽の光に、この部屋の憂鬱も焼き払ってもらおうと思う。なぜなら僕は今、すこぶる気分が良いからだ。そうして僕がこの部屋で見たのは、僕の死体であった。

 あぁ死んで
[次のページ]
戻る   Point(1)