灰燼から這い出る/幽霊
んでいる。すっかり死んでいる。床にはタロットカードが散らばっていて、彼を弔う花のようである。そして僕は悲しくなかった。そうだ僕は彼を殺した。僕は良い自殺をしたのだ。そうして彼の死体にゴキブリが一匹たりとも這っていないのは神の祝福なのだろう。
机の上に注目した。そうであった、書きかけの小説。覗いてみると、書き上がっていた、「孵化」
僕は新しい小説を書きたくなった。開かれた重い扉の向こうからは、恐る恐る陽の光が入ってきて闇と闘っている。仄暗い部屋に僕は確かに立っている、そして後ろ姿はどのようなものだろうか。素晴らしい陽の光が、仄かに透かした背中は静かな力に満ちているだろうか。
僕は振り返って、読者のあなたと筆者をじっと見つめる。僕は笑っているでしょう?僕の気分はそれだけ良いのですよ。
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