灰燼から這い出る/幽霊
立ち上がって、外に入った。
なんと燦々とした世界なのだろうか。陽の光は僕の体の中を通り抜けて悪いものをすべて焼き払ってくれている。僕が産まれ直したようだ。まるで存在していることそれ自体に万雷の拍手を受けている気がする。僕は気分が良い!
歩き出して気がついた、体が軽い。まるで浮いてるようだ。肉体を部屋に置いてきたようだ。とりあえず歩きたくて歩いている。こんなことは久しぶりだ。これは嬉しい。いやもっと嬉しかった。
並木道の木漏れ日が美しいと思った、これが美しいということなのだと思った。木にしがみついている蝉が赤ん坊のように鳴いている気がした。僕は道端に転がった蝉ばかりを見て生きていた。
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