灰燼から這い出る/幽霊
 
答えました。そして知人Wはめくった一枚のカードを見つめながら、古い埃を舞いあげる風のように去りました。
 彼の知人……いや彼のことを知る人間はこれ以上いなかった。
 彼は今、部屋の冷たい床にぐったりと横たわっています。やはり彼はつまらない男なのでしょう。しかしもう目覚めます。今日は優秀な天気予報が外れまして、素晴らしい快晴です。読者のあなた、遮光カーテンにくるまれた闇から陽の光を浴びる彼に、どうか祝福の拍手をしていただきたい。

 明るい。僕は目を覚ました。しかし良い目覚めだ。気分が良い。体を起こして目の前の扉が開いている。その四角い光の中に、僕は無性に体を入れたくなった。そうして僕は立ち
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