悲しみのない自由な空/愛心
いつものようにベッドに入り、翌朝目が覚めたら私の背中には羽根が生えていた。
翼というには小さ過ぎて、服を着てしまえばほとんど目立たない。
こんなものでは勿論飛べなくて、動かそうとしてみると、付け根の、肩甲骨の辺りが痒くなった。
爪の先で引っ掻くと、柔らかな羽毛がくすぐった。
小さな頃に夢にまでみた羽根を手に入れたというのに、実際の心持ちはほぼほぼ無に近かった。
いつもと変わらない。
顔を洗い、朝食を食べて歯を磨き、化粧をして、着替えをし、靴を履く。
玄関の鍵を閉めていると、お隣さんが出てきた。
スーツ姿のお兄さん。これもいつもと変わらない。
挨
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