すすき野原で見た狐/板谷みきょう
の上に横たわる、血にまみれた与一の手を掴みました。村人の誰にも気付かれないで、せせらぎの峰で独り、与一が死んでしまったのです。
どんな訳であろうとも、気に留められずに、気付かれることもない死にざまに、狐の心は、すっかり悲しみに満ち溢れ、いつしか村人への憤りとなって、胸一杯に溢れ出し、狐は夢中で駆け出していました。
気が付くと、月明かりのすすき野原に、ぽつんと佇んでいました。
ぶなの葉を頭に乗せて、くるりと後ろ回りすると、狐は、与一に化けました。
狐にとっては、一生を掛けた一世一代の大化かしです。二度と狐に戻る事の無い様に、残った尻尾を切り落としてしまいました。そうして、朝日が昇るとお天
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