すすき野原で見た狐/板谷みきょう
かじかんだ指先で、幾つも摘んだのでした。ほんの少し濡れたような、季節問わずのイチゴでした。
狐が与一を見つけたのは、それから暫くの時を経てからでした。
ボウボウの草の中に、与一は横たわっていたのでした。
日の当たっていないような、季節問わずのイチゴを、血まみれの手で握ったまま、ピクリとも与一は動きませんでした。
彼の手の中で、萎んだような白いイチゴでした。
狐は、イチゴを与一の手の中からつまみ取ると、口に放り込みゆっくりと噛み締めてみました。
「なんと酸っぱい。そして土臭い白イチゴじゃろ。こんなものの為に、命を落とす事もなかろうものを…。」
狐は、小さな声でそう呟き、草の上
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