すすき野原で見た狐/板谷みきょう
て行くのです。
与一は、キンと尖った冷たい風の抜ける道で、季節問わずのイチゴを見つけたのでした。
誰の手にも届かないように、イチゴは、崖の中腹の少し突き出た断崖に、群生しているように見えました。
改めて与一は、深いため息を漏らしましたが、化けられるようになった狐を思うと、矢も盾も堪らずに、真っ直ぐな崖に向かって行きました。
崖は険しく、登っていくにつれ、爪は割れて剥げ指先は血にまみれていましたが、あまりの冷たさに感覚すら失せているのでしょう。
額にはうっすらと汗さえ浮かべて、与一は、登り続けたのでした。
そうして、手も足も凍え、やっと手にした、小さく白い、季節問わずのイチゴを、かじ
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