すすき野原で見た狐/板谷みきょう
 
が気ではありませんでした。
村人は、気ままな与一のことだからと、何処へ出掛けたのかすら、気に留めるものはいませんでした。

 狐は、せせらぎの峰へ出掛けた与一を追いかけて居ました。川を渡り山を越え、掻き分け、掻き分け、進んだであろう道なき道の獣道を、探して回りました。
 太古の昔から、解けた事のない雪を、頂にかぶる雄々しく、そびえているせせらぎの峰が、ぬおっと眼前に現れた姿を見上げた与一は、軽率な行動を、ちょっと後悔していました。

「はてさて、この峰の何処に季節問わずのイチゴがあるのやら…。」
与一は、少し怖気づき尻込みしましたが、それでも、峰へと歩を進めたのでした。
狐は、生い
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