すすき野原で見た狐/板谷みきょう
ぁー!祝いに、イチゴを持って来るからな。なぁーに心配はいらん。せせらぎの峰の季節問わずのイチゴだぞォ。祝いじゃ、祝い。必ず行って採ってくるからな。」
次の日、与一は、祝いのイチゴを添えるために、暗いうちから起き出しました。陽が昇る遥か前に、社の前にこんな貼り紙をして、遠出の支度をして与一は社を後にしました。それほど、遠くにあるのです。
『村ノ皆サマ、シバラク留守シマス。二、三日デ帰リマス。』
季節問わずのイチゴは、山をひとつもふたつも越えた、せせらぎの峰まで行って探さなくてはなりません。
人間が一度だって入り込めたためしも無い、せせらぎの峰に、与一が行くと聞いて、狐は気が気
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