すすき野原で見た狐/板谷みきょう
はどうしても化ける事ができないのでした。
「やっと曲がりなりに、人の姿に化けられる様になったというのに…。よりによって与一の姿にしか化けられぬとは、不思議なこともござっしゃる。」
狐が人間に化けた時の姿を目の当りにして与一は、大喜びでした。
しかし、その姿が自分の姿でしかない事に、しばらくして気が付くと、複雑な気持ちになりました。
だけども、兎に角、まがりなりにも人間に、化けられる様になったのですもの。めでたくない訳がありません。与一は、隠れていたすすきの穂かげから、ぬっと立ち上がると、手をたたきながら、大きな声で叫ぶように言いました。
「おーい狐よ!わしだ。与一だ!めでたいなぁー
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