もみじ/板谷みきょう
を、川の中で見続けながら、息も絶え絶えになり、ほうほうの体で入り江に着くことが出来た時、青蛇は、すっかりと体力を失っていることに気付いた。
入江から見える海は、真っ黒な雲に押しつぶされて、稲光が走り回る、嵐の「荒れ狂いの大海」だった。振り返ると小さく屏風山が見えた。けれどもそれはそれは遠くにかすかに見えるようで、その遥か向こうにあろう「せせらぎの峰」は、影も形も見えなかった。
力尽き果てた青蛇には、とてもとても「荒れ狂いの大海」で、七つの冬を越すだけの、力も気力も無かった。かと言って、この「ぬらくら川」をさかのぼり、屏風山に戻ることも出来るはずも無い。
その時、やっと、その時になって、や
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(1)