もみじ/板谷みきょう
、やっと。
青蛇は、気付くことが出来たのだ。
龍となって、「せせらぎの峰」の頂上に立つ、己の姿を夢見続けたこと。
必ず龍になれると信じ、疑わなかった自分自身の思い上がりに。
屏風山の懐かしい情景と、仲間たち、軽率だった自分の行いを、思い出し、悔やんでも悔やみきれなく悲しくなった。
しかし、今の青蛇には、もう屏風山に帰ることすらできないのだ。
夢破れ、やせ細って、すっかりと老いてしまった青蛇は、今も、入り江の静かな場所で、暮らしている。
「ぬらくら川」を眺め、遠く屏風山を想いながら。
青蛇は、龍になることも、この世のすべてを知ることも、出来なかった。
屏風山の獣たちは、無鉄砲だった青蛇のことを、忘れてしまっていた。
けれど、毎年、秋になると、紅葉の紅い葉が、「ぬらくら川」を伝い流れてきている。
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