屋根の上に寝転んで 〜かみさまへの手紙〜/服部 剛
 
て水を飲む病人の渇いた喉に
ガラス窓にうつむく僕の自画像に
哀しく微笑む顔を時々ぼんやりと浮かべている

夢の中の僕は窓の外に顔を出すと
鳥は自由に青空を羽ばたき
草花は風に身を揺らして唄い
川は水面をきらめかせながらさらさら流れ
日常の悩みの塊(かたまり)をどこかへ運んでゆくようで
ふと見やる腕時計の三本の針は
すべての出来事を巻き戻すかのように
ゆっくりと逆回転しています。

窓の下を眺めると
昼下がりの川沿いの道を
野球帽をかぶった父と子が語らいながら通り過ぎ
猫は楽しげに舞う黄色と白の蝶々を追いかけています。

向かいの家の煙突から顔を出したおばさ
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