詩の日めくり 二〇一六年七月一日─三十一日/田中宏輔
 
ど、どこか弱弱しいのだな。もしかしたら、経験していないのかもしれない。経験していないのかもしれない。きちんと。


二〇一六年七月四日 「優れた作家の凡庸さ」


 いま、きみやから帰ってきた。これから、モームの『サミング・アップ』を読みながら寝る。さくさく読める。メモはいっさいしていない。書かれてあることに異論もなく、新しい見解も見出せなかったからである。成功した作家というものの凡庸さに驚きはしたけれど、常識がなければ小説も書けないのだから、そう驚くべきことではないのかもしれないとも思った。まあ、それでも短篇選は読むけど。むかし、長篇の『人間の絆』を読んだけれど、よかったと思うのだけ
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