詩の日めくり 二〇一六年七月一日─三十一日/田中宏輔
 

言葉に奉仕することのできたものだけが
ほんとうの意味での詩人なのだと思います。

そういう意味でいうと
「私を語る」ことなどどうでもよく
「詩の署名性」のことなどもどうでもいいことなのですね。

ただ、人間には自己愛があって
まあ、動物のマーキングと似たものかもしれませんが
「私を語る」欲望と
「自分が書いた」という「署名性」にこだわるものなのかもしれませんが
言葉の側から見ると
「私を語る」ことが、言葉にとって有益ならば、それでよいし
「私を語る」ことが、言葉にとって有益でなければ、語ってくれるなよ
ということなのだと思います。


[次のページ]
戻る   Point(14)