広くて静かで誰もいない/コーリャ
 
し強くなってきていて、周りが眩しくて、すこしぼうっとする。停留所のベンチに座る。

バスの中には、同じくらいの年頃の男女の子どもが、最後部で手を繋ぎながら眠っている。運転手はときどき言葉ではないようなものを呟く。今度は腰を下ろした。ただ、景色を眺めていると、さまざなことをとりとめもなく思い出す。思い出は、俺だけのもののはずなのに、俺はそれが俺の体のどこから湧き上がるかを知らない。遠くに見える山並みや、光景を渡る風には、思い出はないのに、俺はそのことを思う。バスはガタガタと揺れながらカーブを曲がり、道を走り続ける。俺は肘を窓枠について、ただ運ばれていく。俺は運ばれ、世界に置き去りにされない。思
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