広くて静かで誰もいない/コーリャ
 
。思い出だけが、そこに永遠のように留まっている。俺はあるところで、ボタンを押す。タラップを降りるときに、チラリと最後部を見たが、子どもたちは、初めにみた時とまるで同じように、眠り続けている。

バスが去っていく後ろ姿を、見つめて、また歩き出す。とても静かな場所だ。静かで広くて何もない。石たちが林のようにどこまでも立っている。空がさっきよりも明るくなって、潮の匂いがする。俺はだいたいの見当をつけて歩きながらあなたの名前を探す。遠くで煙が上がっている。見知らぬ名前をいくつも行き過ぎて、あなたの名前の刻印を見つけて、止まる。世界が風を運んでいる。俺は何も思うことができない。空から降ってきた光が墓石
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