幻視/タオル
ことばは、はっした時点で幻になる。
よくも悪くも。
ね、みみをもつってそういうことだよ。
幻のみみは幻を受けとれる。
昔、にんげんのみみがとても好きな王様がいて、
その王様はロマンティックかつ残忍な性格だったから、
家来やその妻、そしてその子供たちの耳をそぎ落とし、
森の奥ふかくに埋めたのだった。
耳のない死体がお城中にころがって、
とうとう王様の世話をするものが誰もいなくなったから、
王様は乞食のようにみすぼらしくなったとか。
──ウソのようなほんとうの話。
その王様が夜ごと唄うんだよ
ボロ布になったマントをひるがえし、
夜はわたしだ、わたしが
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)