詩の日めくり 二〇一五年十月一日─三十一日/田中宏輔
や龍之介や漱石なんかの絵が描かれた付箋を、とても気に入ってて、集めてうれしかったのだ。自分には、ささいなことで幸福になる才能だけはあるのだと、そのときに悟ったのだった。
二〇一五年十月二十一日 「なんか降ってきたで。」
ぼくが生きているときに、ぼくの作品を知っていると言うひとは、たぶん2、3人くらいのものだろう。そして、ぼくが死んだときには、もはやぼくの作品を知っているひとはだれもいなくなってしまっているだろう。そう考えるのは楽しい。忘れる幸福を知っているだけに、忘れられる喜びもひとしおなのだ。
記憶。ぼくが忘れても、記憶がぼくを忘れない。千のぼくは、ひとつのぼくすら
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