詩の日めくり 二〇一五年十月一日─三十一日/田中宏輔
 
。ひとよりよく降る人生もあるのだ。自分の内面を眺め渡すと、なんとせこい狭い庭か。それでも、どこになにがあるかよくわからないのだ。知らない草や虫がいる。


二〇一五年十月二十日 「幸福になる才能」


 先日の「50円、損するのいやや事件」から二日たつのだけれど、自分のせこさにあきれると同時に、人生をいつくしむ才能が、ぼくには、ほんとうにあるのだなと思った。むかし、いまと違う塾で働いていたとき、葵書房で配られていた和田べんさんの絵で描かれた文豪の付箋を集めていた。「そんなもの集めてうれしいんですか?」と、女性の先生に言われて、びっくりした。ぼくは、無料で配られたかわいらしい絵の鴎外や龍
[次のページ]
戻る   Point(15)