隕石のながい尻尾/道草次郎
 
、何もかもじつに白々しく見える。これらの珍奇な物品、かつて憧れ畏怖までした古の導書(分子生物学の経典。主に、術者が体細胞形質転換を行う際に不可欠とされるたしなみと、ヌクレオチド配列の神的無限性を説く)さえすでに輝きを失って久しいのだ。鎧戸を閉ざした窓外に、行商人の耳障りな訛声だけがこだましている・・・
 
 街路には黒山の人だかり。先週初めに雪崩れ込んで来た避難民の為、王国政府が臨時で設けた職安所に列ぶ行列だ。表通りの花壇へとズカズカと踏み込んでいく彼らのブーツが、真っ青な薔薇の花びらや虹色の棘を踏み躙るのは必至だろう。頭上では、崩れかかったギザギザの翼棟が、高層ビルの滑らかな肌を脅かしてい
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