あぶくみたいに湧いてきた謎のものたち/道草次郎
 
に跨り父のさけめを悪言でやぶいた事もある。ぼくは縦書きの訴状だった。ぼくは横書きの令状だった。残像の波がさらったしめった庭に記憶のドクダミは蔓延った。思春期は瞬く間に荼毘に付され、軽い精通とともに朽ちてしまった。またある時のぼくの喉ぼどけには海蛇が泳いでいた。アクアマリンの地下室へ墜ちたのはたしかヘール・ボップ彗星だったと思う。沈黙。いつも沈黙のまわりにもう一つの沈黙があった。きえてはじめて水となるもの、それは人だった。或いは二十三のぼくだった。強面の思想は氷柱をさげ、表明してもさしつかえない範囲で自己愛を二十六のぼくの頬におしあててきた。あれから、巨岩のような歳月がメテオのように降り、ぼくをあば
[次のページ]
戻る   Point(6)