あぶくみたいに湧いてきた謎のものたち/道草次郎
あばたの月にした。そぐわない詩の夢もいつしか萎え、それは錆びついた匕首にすり替わっていた。もとめ築いたものをうしない、うしなうことの傲慢に、魚や銀河、丸窓や汽車の幻影を投射し阿片の夢にたゆたうフリをして、気付いたら両手いっぱいの腐乱した来歴。どよもすような轟きは今、胸底の空に龍のように飛乱している。それは未来をくろがねの釜の底に変えた。煮え立つ釜だ。だが、ほんとうのぼくは、やはりどこにもいない。それだけが変わることなく、絶壁をなし、眼前に立ちはだかっているのだ、美しくも残酷な断崖として。
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