音楽へのオマージュ(一部改訂・付け足し)/道草次郎
く百年の
いつかはわからぬ
どこかの夕ぐれ
仲良くベンチに羽を休める
つがいの鳩が
おとす
ハート形の影法師
ほの蒼い空には
紫色の月の貌(かお)
しずまり返る雑踏に
たゆたう
活人画風の駅馬車
射す夕陽
草、街、ネオン
そしてねむり
微量の欲がうみおとす
骨たちの風
黒衣の男女が身よせ合って
あるく
石だたみの向こうがわには
ポンペイの骨壷と
星座の回文と
ほんの邪悪な文史(しるしぶみ)とがある
イデアの空を
はみ出していく雲の観想の
行く着くさきに
ある
茜を纏ったワイングラス
つまり
ひとり居が
至福となり得
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