詩の日めくり 二〇一四年十三月一日─三十一日/田中宏輔
ぼくは本を読んでる
いくらページをめくっても
物語は進まない。
寄せては返し
返しては
寄せる
ぼくのまつげの上で
波たちが
泡だらけになって
戯れる
きっと忘れてるんじゃないかな
ページはきちんと
めくっていかないと
物語が進まないってこと
ページをめくってはもとに戻す
ぼくのまつげの上の波たち
いまほど
ぼくが、憂鬱であったためしはない
足の裏に力が入らない
波は
まつげの上で
さわさわ
さわさわ
光の数珠が、ああ、おいちかったねえ
まいまいつぶれ!
人間の老いと
光の老いを
食べ始める
純粋な栄光と
不純な縁故を
食べる
人間の栄
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