ラピスラズリのスケッチ、他/道草次郎
 
さらさら無い様子だった。照準は常に自分へと向けられていて、日々、靴紐を結ぶのは全て昨日の自分を克服する為の行為。それが彼の言動からヒシヒシと伝わってきた。

一言でいえば、不思議な人だった。そして、皆からは変わった人だと言われていた。

彼は自分の世界を持っていた。容易にブレそうにない芯を、その体躯の真ん中に持っているようだった。それから、むけられた水のことごとくを、彼は難無く流す事ができた。返ってきてもそれは肩透かしか、思いも寄らない返事だった。沈黙を送って寄越すこともあり、そんな時ぼくは、内心、大いにたじろいだ。

ぼくには、彼のそんな掴み処の無さがじつに面白かった。

彼は地
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