ピーナッツバタートースト/ホロウ・シカエルボク
 
た十二時間働いた。ケーキもカウントダウンもまったくない、地獄みたいな十二月が駆け抜けたあと、騒ぎ疲れた一月の街をぶらぶらと歩いていると、少し先におかしな歩き方をしている若い女が居るのに気付いた。マリと同じコートを着ていたから余計に目立った。それはマリだった。
 「マリ?」
 あたしは叫んで駆け寄ろうとしたけれど、マリは聞こえなかったのか、聞こえたけど無視したのか、近くの角へ入ってすぐに見えなくなった。追いかけてみようか、それとも家を訪ねてみようかと思ったけれど、約束があったから日を改めようと思って家に帰ったその晩から私は熱を出し、数日寝込む羽目になった。きっと、忙しい時間が終わったことで気が抜
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