ピーナッツバタートースト/ホロウ・シカエルボク
 
やっぱりマリの男で、前科持ちだった。母親を殺しかけたとか。あたしはひと月ぐらい何もする気になれなくて、ずっと勤めていたレストランもやめてしまった。暖かくなったころマリの住んでいた部屋に行ってみた。不思議なことにまだそのままになっていた。マリが生きていた形跡はすっかりなくなってしまっていたけれど、あのトースターはテーブルにきちんと置かれていた。人の頭を砕いたというのに、買ったときのまんまみたいに見えた。ただ、すごく埃が積もっていた。あたしはキッチンの引き出しの中のタオルを出して、トースターを何回も何回も拭いた。あたしが彼女にしてあげられることはそんなことくらいだった。そうしてそれを拭いているととても
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